その自動車を運転していた加害者に損害賠償を請求することができますが、その他にその自動車の所有者に対しても損害賠償を請求できる場合があります。

その自動車を運転していた加害者本人は、不法行為責任(民法709条)を負うので、加害者に対しては当然損害賠償を請求することができます。

もっとも、加害者に資力や使える保険がない場合等には、他にも損害賠償請求できる相手がいないかが気になると思われます。この点、ご質問のケースでは、その車両の所有者に対して、具体的事情によっては、損害賠償を請求できる場合があります。

つまり、自動車の所有者は、具体的事情によっては、運行供用者責任によって、人身被害による損害について被害者に賠償する責任を負う場合があります。

自動車の所有者が「運行供用者」に当たるかどうかは、ご質問のような自動車の盗難のケースでは、その自動車の運行に対する利益と支配があるかどうかを、具体的な事情から判断して決められることになります。この点、所有者は、盗難された自動車の運行については、支配と利益を失っているという理由で、運行供用者に当たらないとされるのが通常です。

もっとも、所有者がその自動車を盗まれたことについて落ち度があった場合には、運行供用者とされることがあります。例えば、キーを付けたままその自動車を路上に長時間放置していたところ盗難に遭ったようなケースでは、所有者の落ち度があるとして、運行供用者に当たるとされる可能性があります。

そして、運行供用者に当たるとされた人は、免責事由を立証できない限り、人身被害によって生じた損害を賠償する責任を負うことになります。

以上のように、運転者だけでなく、自動車の所有者に対しても損害賠償を請求できる場合があります。