バイク事故でむちうちになってしまった際の賠償金について弁護士が解説
- 執筆者弁護士 山本哲也

バイク事故は、車と違って身体を守る外装がないため、転倒や衝突の衝撃で首や肩に大きな負担がかかり、「むちうち(頚椎捻挫)」を負うケースが非常に多い事故形態です。
見た目には大きな外傷がなくても、首の痛み・頭痛・めまい・しびれなどが長期化することもあり、日常生活や仕事に支障をきたすことも少なくありません。
しかし、むちうちはレントゲンなどで明確に証明しづらいことから、保険会社から提示される慰謝料が実際の苦痛に見合わないほど低額に抑えられてしまうケースが多く見受けられます。
そのため、適正な賠償金を受け取るためには、慰謝料の算定基準を理解し、後遺障害等級認定を正しく受けることが重要です。
本記事では、バイク事故によるむちうちの慰謝料の種類と相場、算定基準の違い、請求の流れを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
目次
バイク事故でむちうちになった場合の慰謝料相場

バイク事故で「むちうち(頚椎捻挫)」になるケースは少なくありません。
見た目に大きなケガがなくても、首の痛みやしびれ、頭痛などが長く続くことがあります。
しかし、むちうちは症状を客観的に証明しづらいため、保険会社から提示される慰謝料が低く抑えられがちです。
以下では、むちうちで支払われる慰謝料の種類や算定基準による違い、実際の相場について説明します。
バイク事故でむちうちになったときに支払われる慰謝料の種類
バイク事故でむちうちを負った場合に受け取れる慰謝料には、次の2種類があります。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
事故によるケガで通院や入院を余儀なくされたことに対する精神的苦痛への補償です。
バイク事故では、転倒や衝撃の強さから治療が長期化しやすく、通院期間や治療日数に応じて慰謝料額が増加します。
たとえば、3か月通院した場合はおおよそ50万円前後、6か月以上の通院となると90万円近くになることもあります(弁護士基準の場合)。
後遺障害慰謝料
むちうちは治療を続けても首の痛みや手足のしびれ、頭痛などの症状が残ることがあります。
医師が「これ以上の改善が見込めない」と判断した段階で「症状固定」となり、後遺障害等級の認定を受けることができます。
この等級が認定されると、後遺障害慰謝料として追加の賠償を請求できるようになります。むちうちの場合、主に次の等級が認められることが多いです。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
慰謝料の算定基準|自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の違い
慰謝料の金額は、どの基準で計算するかによって大きく異なります。主な基準は次の3つです。
自賠責保険基準
国が定める最低限の補償基準です。通院1日あたり4300円で計算され、3か月通院(3日に1回のペースで通院)した場合でも約25万円程度にとどまります。
任意保険基準
保険会社が独自に定めた基準で、自賠責基準よりは高額ですが、弁護士基準よりは低く抑えられるのが一般的です。
弁護士基準(裁判基準)
裁判例に基づいて算定されるもっとも高額な基準です。弁護士が介入した場合、この基準で交渉が行われるため、慰謝料が倍以上に増額することもあります。
むちうちの慰謝料相場
むちうちの症状や治療期間、認定された等級によって慰謝料の金額は異なります。
自賠責保険基準および弁護士基準での一般的な相場は以下のとおりです。
入通院慰謝料|6か月通院したケース(3日に1回のペースで通院)
- 自賠責保険基準……約50万円
- 弁護士基準……約90万円
後遺障害慰謝料
| 自賠責保険基準 | 弁護士基準 | |
| 後遺障害12級13号 | 94万円 | 290万円 |
| 後遺障害14級9号 | 32万円 | 110万円 |
症状が軽く見られやすいむちうちでも、後遺障害が残った場合には300万円を超える賠償金が支払われるケースもあります。
そのため、通院中の診断書・検査記録・症状経過をしっかりと残しておくことが、適正な補償を受けるうえで非常に重要です。
バイク事故の慰謝料請求の流れ

バイク事故でむちうちになった場合、慰謝料を受け取るまでにはいくつかのステップがあります。
事故直後の対応から示談・訴訟までの流れを把握しておくことで、適正な補償を得やすくなります。
以下では、一般的な慰謝料請求の流れを説明します。
事故発生
バイク事故が起きたら、まず警察に連絡して事故を届け出ましょう。軽いケガでも後から症状が悪化することがあるため、必ず事故の届出をして交通事故証明書を取得します。
また、事故現場では、車両の位置や損傷状況を写真で記録し、加害者の氏名・連絡先・ナンバー、目撃者の情報も控えておくと安心です。
このような記録が、後の慰謝料請求や過失割合の判断に役立ちます。
治療(入院・通院)
事故後は、必ず整形外科など専門の医療機関を受診し、診断書を取得します。
むちうちは時間が経ってから痛みが出ることもあるため、早期に受診して記録を残しておくことが大切です。
事故当日は痛みがなかったとしても必ず病院を受診するようにしてください。
完治・症状固定
治療を続けても症状が改善しない場合、医師が「これ以上の治療効果は見込めない」と判断した時点で症状固定とされます。
ここで、症状が残っていれば「後遺障害等級認定」の手続きを行うことになります。
症状固定後に通院を続けても、治療費や慰謝料の対象外になりますので、医師と相談して適切なタイミングを見極めることが重要です。
後遺障害等級認定
後遺症が残った場合、自賠責保険を通じて後遺障害等級の認定申請を行います。
むちうちの場合は、主に「12級13号」または「14級9号」が認定されることが多いです。
この認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益(将来の収入減少の補償)を請求できるようになります。
医師の診断書や画像検査の結果が重要な判断材料となるため、申請前に弁護士に相談して内容を精査してもらうのがおすすめです。
示談交渉
後遺障害の等級が決まったら、加害者側の保険会社と示談交渉を行います。
しかし、保険会社の提示額は多くの場合「任意保険基準」で計算されており、弁護士基準と比べると数十万円〜数百万円低いこともあります。
納得できない金額を提示された場合は、弁護士を通じて「弁護士基準」での再交渉を行うことで、慰謝料が増額される可能性があります。
訴訟
示談交渉で合意に至らない場合は、訴訟を提起することになります。
裁判では、事故態様・治療経過・後遺障害の程度などを総合的に判断し、最終的な賠償額が決定されます。
裁判には時間と費用がかかるものの、弁護士基準に基づいた適正な賠償を得られる可能性が高まります。
山本総合法律事務所のむちうちでの慰謝料獲得事例
バイク事故によるむちうちは、痛みやしびれといった症状が長く続くにもかかわらず、軽症と見なされてしまうことがあります。
しかし、適切な医療証拠の収集と弁護士による後遺障害等級認定のサポートによって、慰謝料が大きく増額されたケースも少なくありません。
以下では、当事務所が実際に対応したむちうち事案の中から、2つの解決事例を紹介します
むちうち等の症状で14級9号が認定され、325万円が補償された事例

原付バイクで左折待ちをしていた50代男性が、右方から来た車に衝突され下敷きになる事故に遭いました。
頚部挫傷で半年ほど通院後、保険会社から「後遺障害は認定されない」と打診を受けたため、当事務所へご相談となりました。
弁護士が刑事記録や画像データを精査し、事故状況や症状の経過をまとめた意見書を添付して申請した結果、後遺障害14級9号が認定されました。
その後、弁護士基準で交渉を行い、総額325万円の賠償金を獲得することに成功しました。
迅速な資料収集と的確な主張により、依頼者にもご満足いただける結果となりました。
首の痛みと頭痛で14級9号が認定され、賠償額として約348万円が補償された事例

渋川市在住の女性が、片側一車線の道路を走行中にセンターラインを越えてきた車と正面衝突する事故に遭いました。
事故から1か月後にご相談を受け、今後の通院や後遺障害申請の流れをアドバイスし、その後、頚部痛と頭痛が残存したため、後遺障害申請をサポートしました。
MRI画像で他覚的所見が確認でき、事故態様も重度だったことから、後遺障害14級9号が認定されたため、弁護士基準で示談交渉を行い、休業損害や慰謝料の増額を主張した結果、約348万円の賠償金を獲得しました。
適切な証拠提出と粘り強い交渉により、依頼者も納得のいく解決となりました。
バイク事故のむち打ちを当事務所に相談するメリット

バイク事故でむちうちになった場合、保険会社との示談交渉や後遺障害等級の申請は、専門知識がないと不利な結果になることがあります。
以下では、弁護士に相談・依頼することで得られる3つのメリットを紹介します。
保険会社の提示額より高額な賠償を得られる可能性
保険会社は、自社の支払いを抑えるために自賠責基準や任意保険基準で示談額を提示することが多いです。
一方で、弁護士が交渉に入ると、裁判実務に基づく弁護士基準(裁判基準)で計算できるため、慰謝料や逸失利益が大幅に増額される可能性があります。
実際の事案でも、依頼前後で2倍以上の差が出たケースもありました。
後遺障害等級認定のサポートが受けられる
むちうちは他覚的所見が乏しいケースが多く、後遺障害等級が認められにくい傾向があります。
弁護士に相談すれば、通院の記録方法や診断書作成時の注意点をアドバイスしてもらえます。
また、必要に応じて意見書や補足資料を整えて申請できるため、適正な等級認定を得やすくなります。
示談交渉・裁判を任せて精神的負担を軽減できる
保険会社との交渉は精神的に大きな負担となります。弁護士に依頼すれば、示談交渉・書面作成・損害計算などを一任でき、治療や仕事に専念できます。
また、裁判に発展した場合でも、弁護士が証拠整理や主張立証を代行するため、安心して任せられます。
まとめ

バイク事故によるむちうちは、痛みやしびれが長引くことも多く、適切な賠償を受けるためには後遺障害等級の認定が重要です。
また、保険会社の提示額は、相場よりも低いケースも少なくありません。
納得のいく補償を得るためには、早い段階で弁護士に相談することが大切です。
弁護士法人山本総合法律事務所では、交通事故の後遺障害申請や示談交渉に豊富な実績があります。バイク事故でのむちうちでお悩みの方は、一人で抱え込まず、ぜひ当事務所へご相談ください。




