第 12 胸椎圧迫骨折による後遺症のポイント
- 執筆者弁護士 山本哲也
交通事故の被害者の中には、第12胸椎圧迫骨折による後遺症を抱えた方も少なくありません。後遺症が残ったら、後遺障害等級の認定を受けることで後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになり、高額の賠償金を受け取れる可能性があります。
ただし、思いどおりの等級に認定されないケースも少なくありません。
適切な後遺障害等級を獲得するためには、充実した審査資料を提出したり、結果に納得できない場合には異議申し立てを検討したりすることも重要です。
本記事では、第12胸椎圧迫骨折で認定される後遺障害について解説しています。
適切な賠償金を受け取るためにも、ぜひ最後までお読みください。
目次
第 12 胸椎圧迫骨折とは
第12胸椎圧迫骨折とは、背骨を構成する胸椎のうち12番目(一番下)の骨が、つぶれるように骨折した状態のことです。
背骨は上から頚椎(7個の骨)、胸椎(12個の骨)、腰椎(5個の骨)で構成されており、第12胸椎はみぞおちの裏に位置しています。
第 12 胸椎圧迫骨折の症状
第12胸椎を圧迫骨折すると、まず、背中や腰に鋭い痛みを生じます。特に、寝ている状態から起き上がるときに強い痛みを感じることが多いです。
併せて、胸やけなどの消化器症状が発生することもあります。
神経が損傷したり圧迫されたりした場合には、足のしびれや麻痺、脱力感が生じたり、排尿や排便に支障をきたしたりすることもあります。
第 12 胸椎圧迫骨折の原因
第12胸椎圧迫骨折の原因として最も多いのは、背中に強い衝撃を受けることです。
交通事故の場合は、追突事故で生じることもありますが、バイクや自転車に乗車中、あるいは歩行中に自動車と衝突し、転倒した際などに背中を強く打ち付けて、第12胸椎圧迫骨折を生じることが多いです。
ただし、骨粗鬆症の方や高齢者などで骨がもろい場合は、比較的軽微な衝撃でも第12胸椎圧迫骨折を生じることがあります。
第 12 胸椎圧迫骨折の後遺障害認定の特徴と注意点
第12胸椎圧迫骨折により後遺症が残った場合は、以下のように変形障害、運動障害、荷重機能障害、神経障害として後遺障害等級に認定される可能性があります。
変形障害
変形障害とは、骨折した骨が変形し、元に戻らなくなった状態のことです。変形障害で認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。
後遺障害等級 | 障害の内容 |
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの |
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
変形障害で後遺障害等級の認定を受けるためには、最低限、レントゲン写真等で圧迫骨折を確認できることが必要です。その上で、骨が変形した程度に応じて、認定される等級が変わってきます。
運動障害
運動障害とは、体を思うように動かせなくなった状態のことです。運動障害で認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。
後遺障害等級 | 障害の内容 |
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
運動障害で後遺障害等級の認定を受けるためには、レントゲン写真等で圧迫骨折を確認できることを前提として、脊柱固定術を受けたり、軟部組織に明らかな器質的変化が生じていることなどが必要です。
荷重機能障害
荷重機能障害とは、頭や腰を支える機能が低下し、硬性補装具(身体の機能や動きを補うための医療器具で、プラスチックや金属などの硬い素材でできたもの)が必要となった状態のことです。荷重機能障害で認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。
後遺障害等級 | 障害の内容 |
6級相当 | 荷重機能の障害の原因が明らかに認められる場合であって、頚部および腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの |
8級相当 | 荷重機能の障害の原因が明らかに認められる場合であって、頚部および腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの |
「荷重機能の障害の原因が明らかに認められる場合」とは、圧迫骨折を残していることがレントゲン写真等で確認することができ、かつ、軟部組織に明らかな器質的変化が認められる場合のことを指します。
神経障害
神経障害とは、痛みやしびれなどの神経症状が残った状態のことです。神経障害で認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。
後遺障害等級 | 障害の内容 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号と14級9号の違いは、障害の存在を医学的に証明できるかどうかです。レントゲンやCT、MRIなどによる他覚所見により、圧迫骨折が神経症状の原因となっていることを証明できる場合は、12級13号に認定されます。
医学的証明が不可能な場合でも、症状の一貫性・継続性など総合的な観点から、圧迫骨折が神経症状の原因となっていることを説明できる場合は、14級9号に認定されます。
第 12 胸椎圧迫骨折の慰謝料の相場
第12胸椎圧迫骨折で後遺障害等級に認定された場合は、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料も請求できます。
ただし、慰謝料には自賠責保険基準・任意保険基準・裁判所(弁護士)基準という3種類の算定基準があることに注意が必要です。慰謝料の金額は自賠責保険基準が最も低く、裁判所基準が最も高くなる傾向にあります。任意保険基準による慰謝料の金額は、自賠責保険基準と同程度か、少し高い程度の金額となることが多いです。
以下で、それぞれの相場をご紹介します。
入通院慰謝料の相場
入通院慰謝料の金額は、治療期間(入通院期間)に応じて算出されます。いくつかのケースで、自賠責保険基準と裁判所基準による慰謝料の金額を比較すると、以下のようになります。
入通院期間 | 自賠責保険基準 | 裁判所基準 |
通院6ヶ月 | 51万6,000円 | 116万円 |
入院1ヶ月+通院6ヶ月 | 60万2,000円 | 149万円 |
入院1ヶ月+通院11ヶ月 | 120万円 | 179万円 |
※自賠責保険基準による入通院慰謝料の金額は、実治療日数に応じて異なります。
なお、自賠責保険では、傷害による損害に対する保険金は総額120万円までという上限額が定められているため、治療期間が長引くと入通院慰謝料の満額を受け取れないこともあります。
任意保険基準には上限額の定めはありませんが、裁判所基準よりも大幅に低い金額となります。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料の金額は、認定された後遺障害等級に応じて、以下のように定められています。
後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 裁判所基準 |
6級 | 512万円(498万円) | 1180万円 |
8級 | 331万円(324万円) | 830万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
※自賠責保険基準の()内の金額は、2020年3月31日以前に発生した事故についてのものです。
任意保険基準による後遺障害慰謝料の金額は、自賠責保険基準とほぼ同程度となると考えられます。
以上のように、裁判所基準によると、他の2つに基準によるよりも慰謝料の金額が大幅に高くなります。交通事故の慰謝料は、裁判所基準で請求することが大切です。
第 12 胸椎圧迫骨折で適切な賠償金を得るポイント
第12胸椎圧迫骨折で適切な賠償金を得るためには、まず、医師が「これ以上は治らない」と判断するまで通院を継続し、治療を受けることが重要です。
保険会社が早期に「そろそろ示談をしましょう」と打診してくることも多いですが、安易に応じると、入通院慰謝料の算定期間がそこまでで打ち切られてしまいます。かつ、十分な治療を受けていないと、後遺障害等級認定で不利な結果となるおそれもあるので、注意が必要です。
十分に治療を継続した上で医師から症状固定の診断を受け、的確な内容の後遺障害診断書を発行してもらいます。その上で、後遺障害等級認定の申請を行います。
後遺障害等級認定の審査は原則として書類のみで行われるため、充実した資料を提出することが重要です。そのためには、加害者側の保険会社に任せる「事前認定」よりも、被害者自身が必要書類を作成・収集して申請する「被害者請求」によった方が有利となるケースもあります。
後遺障害に認定されるかどうか、また、何級の後遺障害に認定されるかによって賠償金の金額が大きく異なってきますので、後遺症が残った場合には特に、弁護士へのご相談をおすすめします。
まとめ
第12胸椎圧迫骨折は、バイク事故や、自転車・歩行者と自動車との事故で発生しやすい負傷です。
命に別状がなくても重い後遺症が残る可能性がありますので、まずは十分な治療を受けましょう。
治療終了後、加害者側の保険会社と示談交渉をする際には、適正な後遺障害等級を獲得していることと、慰謝料を裁判所基準で計算して請求することが重要となります。
そのためには、弁護士によるサポートを活用することが有効です。
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