A 損益相殺とは、不法行為の被害者がその同じ不法行為によって利益を受けた場合に、その利益を控除して損害額を算定することをいいます。
  
民法に規定が存するわけではありませんが、当然に予定されているものであり、民法709条の「損害」とは、損益相殺後の損害をいうと考えられます。

この点、賠償すべき金額を決定するに当たって過失相殺がされる場合に、これと弁済や損益相殺による控除のいずれを先に行うべきかが問題となります(いずれを先に行うかで、金額が異なってきます)。

この点、弁済や自賠責制度における損害賠償額の支払(自賠法16条)に関しては、過失相殺がされた後の金額から弁済額等を控除する(すなわち、過失相殺が先行する)ことに異論はありません(このことに伴って、過失相殺が主張されている事案では、既払いの損害項目についても、その具体的金額の主張・立証が必要となります)。

  これに対し、各種社会保険給付に関しては、過失相殺と損益相殺のいずれを先に行うかについて、議論のあるところです。

  例えば、労災保険等については、過失相殺が先行し(最判昭和55年12月18日)、健康保険・国民健康保険については、損益相殺が先行するとされています。
  
これらについては、各給付の性格や目的等によって、過失相殺と損益相殺のどちらを先に行うかが、判断されているといえます。