執筆者弁護士 山本哲也
まだ痛みがあるのに、保険会社から「もう支払えない」と言われた
交通事故に遭って通院治療を継続していたところ、交通事故の相手方の契約している保険会社から、治療費の支払いを打ち切りたいとの連絡が来たり、実際に治療費の支払いを打ち切られるということは珍しいことではありません。
交通事故で受傷してむち打ち症になり6か月間通院治療をしています。まだ症状固定の診断を受けていませんが、保険会社から治療費を支払えないと説明を受けました。まだ痛みがあるのに治療費を支払ってもらえないのは納得がいかないのですが?
そもそも、保険会社としては、損害額全体について示談等が成立するまで、治療費を支払わないという態度を取ることも考えられるところ、治療費については交通事故との因果関係も明らかで、その額等についても特に争うつもりがない等の判断のもと、損害額全体について示談が成立する前に先行して治療費の支払いをしているに過ぎません。
ですから、保険会社がそれまで行っていた治療費の支払いを打ち切るかどうかは、その保険会社の判断次第ということになります。
ただし、保険会社が支払いを打ち切ったからといって、その後に発生する治療費を加害者(ないしは保険会社)に請求できなくなるわけではありません。
また、保険会社が治療費の支払いを打ち切ったからといって、その時点が症状固定の時点となるわけではありません。
保険会社が支払いを打ち切った後に発生した治療費についても、交通事故との因果関係が認められる限り、加害者は被害者に対して賠償する責任があります。ですから、保険会社から治療費の支払いを打ち切られた後も、治療を継続した上で、(保険会社による支払い打ち切り後から)症状固定までにかかった治療費を、他の損害とともに示談交渉の際に請求していくということが考えられます。