その自動車の管理方法に落ち度があった場合には、損害賠償責任を負う可能性があります。

自動車窃盗を行った犯人が、その自動車を運転して交通事故を起こし、第三者に被害を与えることがあります。このような場合に、その盗難車の所有者が被害者に対して、運行供用者責任という責任に基づいて損害賠償しなければならない場合があるのです。

運行供用者責任とは、自賠法3条に規定された責任で、自動車の「運行供用者」に当たる者が、たとえ自分が運転者でなくても、その自動車によって生じた第三者の被害について賠償しなければならないというものです。

この責任が成立する要件についていいますと、まず、第三者の生命又は身体を害する事故(人損)であることが必要で、物損のみの場合には運行供用者責任は成立しません。

次に、ご質問のように盗難車の所有者の運行供用者責任が問題になるケースでは、所有者が「運行供用者」に当たるのかが重要な争点になると思われます。

この点については、主に、自動車が盗難されたことに所有者の落ち度があったかどうかが重要な判断要素になります。

例えば、エンジンをかけたままの状態で、自動車から長時間離れて、路上に放置していた隙に盗難の被害に遭った場合などは、所有者にも落ち度があるとして、運行供用者責任が認められる可能性があるでしょう。逆に、自動車の鍵をかけた状態でガレージに保管していたようなケースでは、所有者に落ち度はないとして、運行供用者責任が否定される可能性が高いでしょう。

また、所有者による自動車の保管や管理に落ち度があったとしても、盗難から交通事故までの時間が長い場合には、所有者が運行供用者に当たらないとされることがあります。例えば、盗難から数週間後の交通事故であれば、所有者が運行供用者に当たらないとされる可能性が高いでしょう。

以上のように、具体的事情によっては、盗難車の所有者にも損害賠償責任が生じる場合があるのです。

窃盗の被害者である所有者が責任を負うことについて不自然に感じられる方もおられるかもしれませんが、法律は交通事故の被害者を救済するために、責任を負う人の範囲を広げているといえます。