執筆者弁護士 山本哲也
経済的全損とは何か教えてください。
経済的全損とは、物理的・技術的には修理することが可能ではありますが、事故当時の車両時価額を修理金額が超えるため、経済的には修理を行うことが損害賠償の観点で不相当とされる場合に、事故当時の車両時価額を損害の限度額とするものです。
経済的全損となり、その事故車両の時価等の損害が修理費を上回るとして損害を請求する場合、当該修理費と比較すべき損害額は何かという点が問題となります。
判例は、以下のように経済的全損か否かは修理費の額と車両時価額に残存車検費用や車両購入諸費用等を含めた金額を比較し、修理費の額の方が低額の場合は経済的全損と判断できず、修理費の請求が認められると考えております。
裁判例
・修理費の額と比較すべき車両全損を前提とする評価額は、車両時価額のみに限定すべき理由はなく、これに全損を前提とした場合に損害と認められるべき車検費用、車両購入諸費用等を含めた額とすべきであり、修理費の額がこれらの合計額を下回る場合は、経済的全損と判断することはできないとした(東京地判平14.9.9)。
・事故の約8ヶ月前に130万円で購入したカワサキ・ZRX1200Rの修理費が122万7292円であるところ、同車種・型式・年式の事故年の中古車小売価格は新車価格の約85%であると推定されていることから、車両価格を110万5000円と認め、登録費用等の買替諸費用は10万円を超過する場合も多いことから、修理費が車両価格に買替諸費用を加えた金額を上回る蓋然性が高いとは認められないとして、修理費をもって車両損害と認めた(東京地判平23.4.26)。
より詳しいことにつきましては、交通事故の実務に精通した弁護士にご相談ください。