1 死亡慰謝料の基準

 交通事故の死亡慰謝料については、日常多発する交通事故の迅速処理の要請や、紛争当事者の公平感を充足させるべく基準化、定額化が進んでいます。

 死亡慰謝料の基準額は、「一家の支柱」については、2800万円、「一家の支柱に準ずる場合」については2500万円、「その他(独身者、子供、幼児等)」については2000万~2500万円となっています。

 ここでいう「一家の支柱」とは、当該被害者の世帯が、主として被害者の収入によって生計を維持している場合をいいます。
 「一家の支柱に準ずる場合」とは、それ以外の場合で、例えば家事の中心をなす主婦、養育を必要とする子を持つ母親、独身者であっても高齢な父母や幼い兄弟を扶養しあるいはこれらの者に仕送りをしている者などをいいます。

 上記死亡慰謝料の基準によれば、「一家の支柱」に対しての慰謝料額が他の場合の慰謝料額に比較して高くなっています。これは「一家の支柱」が死亡した場合、その死亡により遺族は精神的のみならず経済的支柱をも失うことになり、死亡した本人の立場からしても、経済的に独立した家族を残して他界することに比べて、その悔しさ、無念さはひとしおであり、残された遺族の悲しみ、将来への不安は、大きなものとなること、遺族の扶養的要素を死亡慰謝料に取り入れる必要があることなどによるものです。

2 被害者の近親者

 民法711条は、死亡した被害者だけでなく、その近親者についても近親者固有の慰謝料を認めております。

 民法711条は「被害者の父母、配偶者、子」と規定していますので、それ以外の近親者については認められるのか、認められないのかということが従前議論されていました。これについては、最高裁昭和49年12月17日判決において、文言上民法の規定に該当しない者であっても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたものについては、同条の類推適用により、加害者に対して直接に固有の慰謝料を請求しうるとしました。

 現在では、内縁配偶者、妹、兄、再婚相手の連れ子に対しても、固有の慰謝料請求権が肯定される傾向にあります。

3 増額事由

 次のような事情が主張・立証された場合に基準額よりも増額されることがあります。

(1) 加害者の過失が重大であったり、事故態様が悪質な場合

 例えば、飲酒運転、ひき逃げ、速度超過、信号無視、居眠り運転、無免許運転、脇見運転等の場合で、重大性、悪質性の程度を考慮して増額の有無、程度を判断する事になります。具体的には以下のようなものがあります。

・3歳及び1歳の女の子が搭乗中の高速道路で渋滞により停車中の車両に、常習的飲酒運転をしていた加害運転者運転のトラックが追突して炎上し、両親の面前で後部座席で焼死した事例につき、被害者それぞれにつき3400万円を認めた事例(東京地判平成15年7月24日)

・19歳男性で飲食店員につき、非行少年らのグループが、無免許で2台車両を連ねて「おやじ狩り」、「引ったくり」などの違法行為をしながら危険運転をし、センターラインオーバーをした加害自動車と被害者の原付自動車が衝突し、加害自動車は事故後一旦停車したものの、また走行を始めたため被害者は200m以上引きずられ死亡した場合に、3750万円(本人3000万円、両親各300万円、兄150万円)を認めた事例(大阪地判平成18年7月26日)

・43歳女性で主婦の死亡事故につき、加害者は部下には当日車で参加しないよう注意喚起していたが自らは車で出勤して忘年会で多量飲酒(呼気1リットルにつき0.55mg)の上仮眠状態に陥って道路左側線付近を歩行してきた被害者ら4名を順次跳ね飛ばした悪質さや運転動機の身勝手さ、薬局を経営する夫や3人の子の成長を見届けることなく生命を奪われた被害者の無念さなどを考慮して、3200万円(本人2700万円、夫200万円、子3人各100万円)を認めた事例(東京地判平成18年10月26日)。

(2) 加害者の事故後の態度が著しく不誠実な場合

 証拠の隠滅が増額事由にあたることは明らかであるが、単に謝罪や見舞いをしなかった、あるいは責任を否定したとの一事をもって増額事由となることには慎重にならざるを得ず、常識に反するような対応をしたなど著しく不相当な場合に限られると考えられています。具体的には以下のようなものがあります。

・37歳男性で妻の父が経営する会社からの請負業の死亡につき、加害者が、無免許飲酒運転中居眠りをしセンターラインオーバーをしたこと、事故後救護せず、運転者について虚偽の供述を行い同乗者に口裏合わせを求めたこと、被害者の長男も同事故で死亡し、妻と2人の娘も重大な傷害をおったことなど考慮し、3600万円(本人2500万円、妻300万円、子3人各200万円、父母各100万円)を認めた事例(さいたま地判平成19年11月30日)。

・69歳男性で兄弟の仕事の手伝いの死亡につき、著しい前方注視義務違反のほか、事故発生後に現場から逃走し、破損したナンバープレートを捨てるなどの証拠隠滅行為を行い、実刑判決を受けて服役後も一切損害賠償に応じる姿勢を見せないなどの加害者の態度は極めて悪質であるとして、2900万円(本人2200万、妻400万円、子3名各100万円)の慰謝料を認めた事例(名古屋地判平成22年2月5日)。

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