具体的な事情によっては、元請人が被害者に対して損害賠償責任を負う場合があります。

元請人が注文者から工事等の仕事を請け負った後、元請人からさらにその仕事の一部を下請人が請け負うという場合があります。そして、下請人がその工事などの仕事を行っている際に交通事故を起こして他人に被害を与えた場合、被害者としては、下請人だけでなく、元請人に対しても損害賠償請求したいと考える場合があります。

この点、法律上、元請人は下請人とは別の人格ですので、基本的には責任を負わないことになります。しかし、具体的な事情によっては、使用者責任又は運行供用者責任に基づいて、元請人も被害者に対して責任を負う場合があります。

まず、元請人の使用者責任(民法715条)が成立するためには、その交通事故が事業の執行についてなされたこと、元請人と下請人の間に使用関係があること、元請人による下請人に対する注文や指図に過失があること等、いくつかの要件を充たすことが必要です。

使用関係は、必ずしも雇用関係があることは必要ではなく、実質的な指揮監督関係があるかによって決まります。例えば、下請人が元請人の従業員とさほど変わらないような関係にあった場合には使用関係が認められ易いでしょう。

次に、運行供用者責任(自賠法3条)が成立するためには、元請人がその自動車の運行供用者に当たること、被害者がその交通事故により生命又は身体に被害を受けたこと(人損があること)等、いくつかの要件を充たすことが必要になります。

「運行供用者」という要件についていいますと、自動車の所有者は運行供用者に当たるとされることが多いですので、元請人がその自動車の所有者であった場合は運行供用者と判断される可能性が高いでしょう。

また、所有者でない場合に元請人が運行供用者に当たるかどうかは、下請人が元請人に専属するような関係があったか、元請人がその自動車の管理や保管にどの程度関わっていたか等、様々な事情を総合的に考慮して判断されます。

以上のように、元請人の使用者責任又は運行供用者責任が成立するかどうかは、一概にはいえず、個別具体的な事情によって決まることになります。