目次

1.遷延性意識障害とは
2.高次脳機能障害とは
3.遷延性意識障害と高次脳機能障害の関係
4.遷延性障害になった場合に損害賠償請求をする際に必要なこと
5.まとめ

1.遷延性意識障害とは

1.遷延性意識障害とは

遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)とは、いわゆる「植物状態」のことをいいます。

脳の大脳といわれる部分が広範囲にわたり損傷したり壊死したりすることにより,重度の昏睡状態に陥る状態をいいます。

日本脳神経外科学会は、遷延性意識障害を次の6つの項目が3か月以上継続している状態であると定義しています。

①自力移動ができない
②自力摂食ができない
③失禁がある
④眼球は動いていても認識することができない
⑤簡単な命令には応じることもできるが、意思疎通ができない
⑥声を出しても意味のある発語ができない

2.高次脳機能障害とは

2.高次脳機能障害とは

高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、主に脳の損傷によって起こされるさまざまな障害のことをいいます。
その症状は、神経学的な知覚、記憶、学習、思考、記憶への障害などがあり、そのほか、心理学的な感情、理性への影響も生じることがあります。

3.遷延性障害と高次脳機能障害との関係

3.遷延性障害と高次脳機能障害との関係

遷延性障害は完全に回復することが難しく治療方法も現状維持にとどまることが多いものです。
しかし、中には回復をする方もおり、高次脳機能障害のレベルまで回復する場合もあります。

4.遷延性障害になった場合に損害賠償請求をする際に必要なこと

4.遷延性障害になった場合に損害賠償請求をする際に必要なこと

⑴成年後見制度の申立て

遷延性意識障害になってしまった方は、裁判のために物事を判断することができないとして、自身の損害賠償請求事件であったとしても示談や訴訟などの当事者になることができません。
そこで、成年後見人を立て、成年後見人が本人に代わって示談や訴訟などを行うことになります。

⑵遷延性障害及び高次脳機能障害が交通事故により生じたことの立証

通常の交通事故で生じる骨折などのけがの場合、交通事故により生じたことが明らかであるとして、因果関係が問題になることはそれほど多くありません。

しかし、遷延性障害の場合、被害者自身の脳の障害が原因であることも考えられるため、本当に交通事故によって生じたということが証拠上立証されなければ、適切な賠償額を得ることができません

また、高次脳機能障害についても同様で、その症状が交通事故によって生じたということができなければなりません。

⑶遷延性意識障害特有の争点

遷延性意識障害の場合、加害者の側から、損害賠償のうち逸失利益に関して生活費控除がなされるべきであると主張されることがあります。
そこで、これに対しても適切な反論がなされなければなりません。
まず、逸失利益とは交通事故に遭わなければ得られたであろう利益のことをいいます。
将来得られたはずの収入がこれに当たります。

しかし、このうち何割かは、交通事故に遭わなければ、本来生活費として消費されるはずです。
そこで、被害者が逸失利益全ての賠償を受けると、本来消費される分の金銭についても余分に受け取ることになるため、かえって公平を損なうことになります。

そこで、生活費として消費されていたであろう部分を逸失利益から控除することを、生活費控除といいます。
加害者の側が、遷延性意識障害の場合は健康な人と比べて生活費がかからないはずであるから、その分生活費を控除すべきであると主張することがあるのです。
裁判例には、このような主張は認めず、生活費控除も行うべきでないとするものが多くありますが、一方で、加害者側の主張を認めて生活費を控除すべきとしたものもあります。

そこで、生活費控除について、適切に反論する必要があります。

まとめ

5.まとめ

加害者の保険会社との示談交渉や訴訟の場において、適切に主張を展開し立証をしていくには、障害の性質をよく知り、訴訟を見据えて資料を早期に収集し保管しておくなどの必要があります。
また、遷延性意識障害や高次脳機能障害は、事故と障害の因果関係など通常の交通事故訴訟とは異なる点が複数存在します。

そこで、これらに適切に対処することができる専門性の高い弁護士に早期に相談することが、適切な賠償を受けるために重要となるのです。